梅雨で不安定な天気が続き、近頃街乗りしかしていなかった。それを今さらのように思い出すと突如としてツーリングに行きたくなった。それを思いついた時間は7/11の午前0時過ぎ。ここで寝てしまっては自堕落な僕が朝早く出発できないのは火を見るよりも明らかだったから、徹夜で行こうと決心。行き先は以前より行きたかった大台ケ原。大台ケ原にツーリングするだけでは距離も中途半端だし面白くないので、トレッキングをしようと決めていた。立山と屋久島でトレッキングを気に入ってしまったのだ。いずれもベタだけど、初心者の僕には楽しいものだった。3時に風呂に入り気合も注入。腹にも元気を、と思い近くの牛丼屋に牛を食べに行った。たまに食べると美味しいね、牛丼は。牛丼屋を出ると、早速ツーリングモードに変身だ。まずはリュックからタンクバックを取り出し、タンクにセット。勿論タンクバックの中はツーリングマップル(地図ね)、自家製烏龍茶と使い捨てカメラ、小物。服装も変身した。道端でタンクトップ一枚になり、その上にライディングウェア兼カッパを着た。バイクを降りた時ウェアを脱ぐから、タンクトップの上に着る半袖シャツもリュックにあった。温度調整は重要だから、こういう細かさも欠かせない。それでも今回工具を忘れていた。結果的には必要なかったけど、ダメじゃないか。反省だ。
 牛丼屋を出発したのは5時ちょうどだ。この時間だから渋滞もなくそこそこのスピードで奈良県に入った。R24だけど遅いおっちゃんの車にイジワルされた。信号に引っかかると、わざわざ邪魔をするために僕のバイクを無理に抜かして、横断歩道の上にまで出てきてそこからさらに左寄せした。軽の四駆だったけど、おっちゃんのイジワルに屈してはいけないと思って何度もスタートダッシュで抜いた。それでも信号に引っかかると同じ事をして僕の前を40キロくらいしか出さずにゆっくり走る。それも城陽市の辺りから山城町くらいまで。しつこいので最後はウルトラダッシュでおっちゃんの3倍くらいのスピードで振り切ってやった。なんて幼稚なんだろう、二人とも。そんなこんなで奈良公園を5:55に過ぎた。555と三つ並んだのが嬉しくて覚えていた。それから順調にR169を南下していると重大なことに気付いた。ここから先にガソリンスタンドがグッと減る。大台ケ原に着いても帰りの燃料がない。しかも、その時は朝7時前。GS開いているところがない、ない、ない。時々見つけてもロープが張られていて営業時間外。あぁ、ちょっとやばい。GSが開くまで待ちぼうけなんて嫌だぞ。そんな考えごとをし続けて30分くらいやっと営業中のGSを発見し事なきを得る。今回は大台ケ原ドライブウェイ以外でアップダウンが少ないのであっさりとしたものだった。
 8時半大台ケ原ドライブウェイの終着地に到着。早く着きすぎたせいでなんのお店も登山情報の施設もやっていなかった。もしかしたら登山届を出さねばならないのかな、と思いつつも、開館は早くても9時だろうから待っていられない、ということになり、勝手に歩き始める。最初のシオカラ谷だけにしておこう。そう思って歩き出したのだが、結局遊歩道の部分をほとんど回ってしまったよ。山道を遠いコースで5キロ。トレッキングは散歩じゃなくて山歩きだよな、と実感。シオカラ谷は綺麗な川に吊り橋が架かっているこぢんまりとした、それでも何か嬉しいような場所だった。シオカラ谷の前後は急坂で鬱蒼としているし、クマでも出るんじゃないかと本気で心配してしまった。後にパンフで調べてみるとツキノワグマが生息しているとのことだ。シオカラ谷から牛石ヶ原の登りは本当に苦しかった。元々体力がないのに加えて運動不足なせいだろう。この1、2年で一番堪えた。足が震えたのなんてどれぐらいぶりだろう。牛石ヶ原の手前の尾根で疲労のピークが来たけど、不思議なものでそれ以降は全く疲れなかった。歩いていて慣れるのだろうか。牛石ヶ原で森が急に開けて一面背の低い笹だらけとなり、陽光がさんさんと降り注いでいるのが分かった。いい天気だな、と思わず独り言。牛石ヶ原には神武天皇の碑か像か分からぬが、ともかく建立されていた。日本史や神話に疎い僕にはありがたみがよく分からなかった。牛石ヶ原から道も急に歩きやすい石畳であるとか砂地であるとかになって足どりは更に軽くなった。正木ヶ原に着いたのはそれからしばらくだが、物音がしたので左を見ると5頭くらいの野生のシカがいた。奈良公園や宮島の餌付けされたものとは違って、一挙手一投足全てが野生だ。野生のシカは京北町の山中バイクではねそうになったのと、屋久島のヤクジカだけだったので嬉しくてカメラを向けた。ちょっとでも動くと警戒するので、もうちょっと観察してみようと思い、石に腰を下ろしてずっと見つめてみた。シカは笹を時々食む以外はずっと僕を見つめていた。僕が小さくなると、首を上に伸ばして観察してきた。木の裏に隠れると、数歩右に左に動いて結局ばれた。それでは、これならどうだ、とばかりに遊歩道が地面より低くなっているところに寝転んで隠れるとこれはばれなかった。しばらくするとむなしくなったからすっくと立ち上がるとシカは大いに驚いて「ぴゅわっ」みたいな鳴き声を上げると、群れが駆け出して僕の前から消えた。こんなことが5回はあった。野生のシカはいい。シカの群れを何度も見かけながら日出ヶ岳(1694m)を目指した。日出ヶ岳は木製の階段で上り下りしながら気力で登った。ドライブウェイ自体が1500m近くあるだろうから実際は大して登っていないんじゃなかろうか。それでも低いところを歩くよりずっと疲れた気がした。展望台に着いた時には東にガスが出ていて、富士山は勿論、知多半島も見えなかった。残念だ。日出ヶ岳を下り始めると、ずっと道が楽で、地図には2キロが40分かかると書いてあるのに、僕は20分で駐車場に着いてしまった。結構元気あるじゃないか。シカと戯れたり、ぼーっと山を眺めたりしたせいで、時間がかかりプラスマイナスゼロで普通の人と同じ3時間ちかくを費やしたみたいだ。余り人に会わなかったが、出会うと必ず自分から挨拶しておいた。自分から挨拶すると相手も挨拶をしてくれやすい。仏頂面のおっさんが唯一無視したくらいだったので、気分がよかった。全工程の三分の一、シオカラ谷の時点ですでに腹ペコだったので、せっかくだし大台ケ原で食事を摂ることにした。11時過ぎに簡素なレストランに入り「川魚定食」を食した。ご飯、お吸い物、漬物二種類、魚を甘く漬けたもの(?)二匹、ワラビ等の山菜で840円だ。観光地にしては妥当かな。食事を終えて帰路に備えて着替えや荷造りをしていると老夫婦が「まぁ、大きいバイクね」と云ってくれた。実際はすごく小さいんだけど素人には大きく見えるんだろう。観光地では単車姿は目立つし、声をかけられやすく、おじさんやおばさん相手には人気者になれる。
 帰路は往路よりも時間がかかった。京都・奈良方面へは渋滞しているし、往路より時間が遅いから車が多かった。R24を主に使ったが何も面白くなかった。車には迷惑だがかなりすり抜けを使った。余裕で百台以上は抜いているだろう。小さい単車のくせにかなりスピードを出して突き進み、3時半頃に帰宅。今回の大台ケ原ツーリングは全工程280キロだった。ツーリングは楽だったけど、トレッキングは疲れた。体力をつけねば…。

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