職人

2003年7月13日 思い付き批評
 朝から雨。これではせっかくの日曜日でも出かける気分がそがれる。家から出るのもおっくうで、だらだらとしていても腹が減る。近所のたこ焼き屋に行くことにした。初めて入るお店だったが、おっちゃんが愛想良く「いらっしゃい」と声をかけてくれた。おっちゃんは前歯が数本欠けていて、それに愛らしさを感じた。僕が持ち帰りをお願いしたいと言うと、これ持って帰るか、とたこ焼きの鉄板を持ち上げて渡そうとした。あまりの暴挙にびっくりし、こんなん持って帰れるわけがないじゃないですか、と真剣につっこんだ。そんなこんなで雑談をしていた。と、突然おっちゃんが窓際に移動した。何事かと思って見ていると、この雨ほんまにうっとうしいわ!泣かしたろうか!と怒鳴った後、こちらを見ている。これはツッコミを求めている関西人の顔だと確信したので、ただでさえこんなに泣いて雨降らしてんのに、これ以上泣かしたらもっと大雨になりますやん!と申し上げると、ナイスツッコミと満面の笑みを返してくれた。ギャグもさることながら、離婚の話、息子の話、たこ焼き屋の話…と色々聞いた。それら全部決して軽い話ではないのに、全て笑顔でギャグを交えて話を聞かせてくれた。苦労話を若僧への説教にせずに笑いにして、僕に教えてくれたのだ。汗と涙を笑いに昇華したおっちゃんに心から感心するより他になかった。たこ焼きを仕上げる時にアルコール度の高いお酒をかけて引火させて仕上げた技は職人だった。けれどもそのトークこそ職人だと思う。
「おっちゃん、ありがとう。また来るわ。取っといて」
レジの下に入れ歯募金なる箱があったのを見つけた僕は釣銭を全部投げ入れた。

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