山本 おさむ 秋田文庫

耳が聞こえず
もの言えぬ
子どもたち…
その子等が
他人に心を開き言葉を知り…
自分の世界を広げ
豊かな人間に育っていく…
その事が
音楽なんだと…
今日初めて知りました。


筆者山本おさむは教育マンガを語る上で外せない人物だと思う。
それはPTAのおばちゃんが目ん玉ひん剥くような
手塚治虫の「教育者」ぶりとは全く違った意味でである。
山本おさむのマンガは小中学校の図書室に置けるだけの価値を持っているだろう。
彼の代表作『遥かなる甲子園』『わが指のオーケストラ』『どんぐりの家』は
いずれもハンディキャップを持った子どもとそれをサポートする大人の奮闘記であり
それが世間の冷たさに打ちひしがれながらも社会的に影響を及ぼしていくといった物語だ。
とにかく涙を流す。悲しみ・苦しみに涙。感動に涙。
簡単に書いてしまったが
その苦しみといったら「普通」の健常者との乖離をどんどん容赦なく暴き出していき
いかに救い難いかの困難を次々に提示してくる。
それに読者は圧倒されるのだ。

この『わが指のオーケストラ』は
聾教育の現在までの過程を一般の読者にまで知らしめた名作だ。
それはただの聾教育の困難とそれにまつわる悲話で感情移入して終わるような話ではなく
教育者高橋潔の伝記であり聾教育の概説書であり、それの近代史であった。
そして聴覚障害者を取り巻いた環境の救い難さと教育による希望である。
手話や口話、聾教育の歩んだ道に興味がない人間が読んでも本書の傑出ぶりは明らかだろう。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索