手塚治虫『シュマリ』
僕のは角川文庫。
上・中・下巻、一気にいきました。
全31章からなるロマン的作品。
まぁ「男のロマン」のロマンにも通じるけど、
本邦ロマン・マンガでもトップクラスの作品だと
勝手に思っております。
最近、あれなんだよ。
俺ん中、北海道ブーム。
大自然とかの憧れっていうよりは怖さだね。
それとアイヌ。
夭折した知里幸恵さん絡みでユーカラを聞く機会があって、
直感的に所詮、俺もシャモ(和人)なんだと思った。
いつしかの総理の「神の国」発言で日本民族の純粋性、
これに対する反発がブームになったね。
北海道や沖縄の先住民を忘れるなよ、と。
ネイションからエスニシティへの視点の変化というか揺さぶりは面白かったね。
でもそれとは全く連動してないよ。
あ、書き忘れで不親切だった…、ユーカラって口伝の詞曲ね。
大きく分けると神のユーカラと人間のユーカラがあるらしいけど。
あと博物館になってる前・網走監獄の見学はこのマンガを読むにも役に立ったや。
今のマンガのタイトルは無意味に手が込んでるものが多くて面倒臭いね。
手塚さんの見てごらん。
作品なんて主人公の名前がタイトルになっているものが多いよ。
これは手塚さんに限らないけどさ。
俺は4章あたりから急速に惹かれたよ、このマンガ。
南部の娼婦・お軽の死から太財一族の登場でグッと加速が増して、
この一族が簡単に悪役にはなってくれないしな〜。
前妻・妙の仇(間男)を取れずに
流浪してきた主人公シュマリに太財一族の娘・お峯が接近。
お峯はシュマリをだまして財産を掠めるつもりが彼を愛してしまう。
しかもそこにポン・ションという捨て子がシュマリの家族となり
更にアイヌとの接近を描くことに成功している。
解説が夢枕獏なんだけどこいつ目の付け所がいい。
俺と全く同じ所で惹かれてるし。
このお峯が妙にうり二つなんてのがまた面白い。
しかも妙は余市川のほとりで一人身を貫き生きているし。
太財一族は基本的に悪役だけど、クールな弥七は最後まで憎めないし、
俺は好きだわ、こいつ。
日本の近世・近代史を勉強している人が読んだら仰天するけど、
土方歳三が生きていた!って設定なのね。
所詮マンガはエンターテイメントなんだからって思えばいいんだろうけど
流行のマンガの主流化を受けてクソ真面目に反論しないように。
これを史実と思う人間を批判するのはいいけど
手塚さん自体を批判しないようにね。
東洋史の俺だって横山光輝のマンガを史実だと鵜呑みにしたマニアは批判するけど
割り切って読んでいる読者や著者を批判しようとは全く思わないし。
十兵衛(土方)と牧場を失ったシュマリがすねて仙人じみた行動をとるところ、
同性なら、この遁世ぶり理解できるんじゃないかな?
その遁世を妙への気持ちで捨てて、己に賭ける行為も。
お妙とお峯が出会ってからは特に女性性を考えずにはいられないね。
マンガとはいえ、近代だから多少どころか結構男に都合の良い設定なのよね。
男としてこの設定はたまりませんな。
お峯の危険さと男への悟りが素敵すぎる。
妙は漂白する身とは裏腹にシュマリを愛していたなーんて
設定が女らし過ぎてあんまり好きじゃない。
彼女を殺してしまう旦那華本男爵は嫌いだけど、魅力的な登場人物だね。
例えばカリフォルニアでジャップ!とバカにされた経験が、
貴族の高慢さとの兼ね合いで日本人としての卑小さを際立たせている。
彼、キリスト教を信奉し、洋服に身を包み、馬に乗りで洋風なんだよね。
和に対して洋、しかもシュマリはアイヌ風の和人、この関係も楽しい。
妙を殺したのも、そこらへんを考えると全く不自然さがないし、
共感はしないけど理解はできる。
最後にまとめで、舞台は北海道だけなんだけど、視野が狭くないね。
サブカル研究者や手塚さん信奉者がこの作品を持ち上げる前に言っておこう。
男が主人公の時は一代記こそがロマンなんでしょ?
女主人公の場合は血のつながりで数代に渡るんでしょ?
これこそが日本文学の正統で、
手塚さんがそれを担うことになったことにしたいんでしょ?
俺、マンガは好きだけど、世の中マンガだけって奴が多すぎる。
だから同じマンガを読んでいても、
着眼点に共通性が見出せて熱いトークになった、そんなことはほとんどないや。
「趣味は読書」って言っておいて、ほとんどの人は、
ベストセラー本+ハウトゥー本+マンガ+αばっかりなんだもん。
善良な読者って「分かる、分かる」って擦り寄ってくるから嫌いだよ。
基本的に読書が危険な行為であることを分かっていない。
僕のは角川文庫。
上・中・下巻、一気にいきました。
全31章からなるロマン的作品。
まぁ「男のロマン」のロマンにも通じるけど、
本邦ロマン・マンガでもトップクラスの作品だと
勝手に思っております。
最近、あれなんだよ。
俺ん中、北海道ブーム。
大自然とかの憧れっていうよりは怖さだね。
それとアイヌ。
夭折した知里幸恵さん絡みでユーカラを聞く機会があって、
直感的に所詮、俺もシャモ(和人)なんだと思った。
いつしかの総理の「神の国」発言で日本民族の純粋性、
これに対する反発がブームになったね。
北海道や沖縄の先住民を忘れるなよ、と。
ネイションからエスニシティへの視点の変化というか揺さぶりは面白かったね。
でもそれとは全く連動してないよ。
あ、書き忘れで不親切だった…、ユーカラって口伝の詞曲ね。
大きく分けると神のユーカラと人間のユーカラがあるらしいけど。
あと博物館になってる前・網走監獄の見学はこのマンガを読むにも役に立ったや。
今のマンガのタイトルは無意味に手が込んでるものが多くて面倒臭いね。
手塚さんの見てごらん。
作品なんて主人公の名前がタイトルになっているものが多いよ。
これは手塚さんに限らないけどさ。
俺は4章あたりから急速に惹かれたよ、このマンガ。
南部の娼婦・お軽の死から太財一族の登場でグッと加速が増して、
この一族が簡単に悪役にはなってくれないしな〜。
前妻・妙の仇(間男)を取れずに
流浪してきた主人公シュマリに太財一族の娘・お峯が接近。
お峯はシュマリをだまして財産を掠めるつもりが彼を愛してしまう。
しかもそこにポン・ションという捨て子がシュマリの家族となり
更にアイヌとの接近を描くことに成功している。
解説が夢枕獏なんだけどこいつ目の付け所がいい。
俺と全く同じ所で惹かれてるし。
このお峯が妙にうり二つなんてのがまた面白い。
しかも妙は余市川のほとりで一人身を貫き生きているし。
太財一族は基本的に悪役だけど、クールな弥七は最後まで憎めないし、
俺は好きだわ、こいつ。
日本の近世・近代史を勉強している人が読んだら仰天するけど、
土方歳三が生きていた!って設定なのね。
所詮マンガはエンターテイメントなんだからって思えばいいんだろうけど
流行のマンガの主流化を受けてクソ真面目に反論しないように。
これを史実と思う人間を批判するのはいいけど
手塚さん自体を批判しないようにね。
東洋史の俺だって横山光輝のマンガを史実だと鵜呑みにしたマニアは批判するけど
割り切って読んでいる読者や著者を批判しようとは全く思わないし。
十兵衛(土方)と牧場を失ったシュマリがすねて仙人じみた行動をとるところ、
同性なら、この遁世ぶり理解できるんじゃないかな?
その遁世を妙への気持ちで捨てて、己に賭ける行為も。
お妙とお峯が出会ってからは特に女性性を考えずにはいられないね。
マンガとはいえ、近代だから多少どころか結構男に都合の良い設定なのよね。
男としてこの設定はたまりませんな。
お峯の危険さと男への悟りが素敵すぎる。
妙は漂白する身とは裏腹にシュマリを愛していたなーんて
設定が女らし過ぎてあんまり好きじゃない。
彼女を殺してしまう旦那華本男爵は嫌いだけど、魅力的な登場人物だね。
例えばカリフォルニアでジャップ!とバカにされた経験が、
貴族の高慢さとの兼ね合いで日本人としての卑小さを際立たせている。
彼、キリスト教を信奉し、洋服に身を包み、馬に乗りで洋風なんだよね。
和に対して洋、しかもシュマリはアイヌ風の和人、この関係も楽しい。
妙を殺したのも、そこらへんを考えると全く不自然さがないし、
共感はしないけど理解はできる。
最後にまとめで、舞台は北海道だけなんだけど、視野が狭くないね。
サブカル研究者や手塚さん信奉者がこの作品を持ち上げる前に言っておこう。
男が主人公の時は一代記こそがロマンなんでしょ?
女主人公の場合は血のつながりで数代に渡るんでしょ?
これこそが日本文学の正統で、
手塚さんがそれを担うことになったことにしたいんでしょ?
俺、マンガは好きだけど、世の中マンガだけって奴が多すぎる。
だから同じマンガを読んでいても、
着眼点に共通性が見出せて熱いトークになった、そんなことはほとんどないや。
「趣味は読書」って言っておいて、ほとんどの人は、
ベストセラー本+ハウトゥー本+マンガ+αばっかりなんだもん。
善良な読者って「分かる、分かる」って擦り寄ってくるから嫌いだよ。
基本的に読書が危険な行為であることを分かっていない。
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