萩尾望都『トーマの心臓』小学館文庫
女友達にオススメを貸してもらった。
「(このマンガは)文学してるんですよ!」
まぁ、威勢の良いことと思いつつも借りる。
別に文学が素晴らしいなんて思わないけど、
一般的にはマンガより優れたものってイメージなのかもしれない。
というよりマンガが浮上するためには比較対称が必要だから、
そのために敢えて高いところに据えておいて、それから引きずり落とす。
こういったイメージが必要なんだろうね。
少女マンガ読んだことないからどんなものか漠然としか分からないのだけど
これって多分少女マンガなんだろう。
絵のタッチだけじゃなくて世界が少女趣味だもの。
マンガの中は男ばっかりの世界なのに。
感想は文学じゃない。
あれもこれも「ブンガク」って告げれば「文学」になるご時世ですから
「文学」って言ってもいいけどね。
ヘッセ風味の中高生向けロマンスそっくり。
マンガとしては達成度が高いとは思うけど。
ギムナジウムも筋も拙いヘッセなんだよね。
手法は童話と似ているかな。
まず「なぜ、どうして」が切り捨てられた設定だから。
どうして少年同士が愛し合うのか?
「ギムナジウムの中の話だから」だけじゃ説明がつかない。
愛、愛、愛、愛、愛、愛とうるさいが、愛ってなによ?
キリスト教風味を世界観に持ち込んだはいいけど輪郭がはっきりしないのよね。
解説もエロスだとか言葉を持ち出しておきながら愛という問題に意識的ではないし。
でも著者はしたたかだ。
切り捨てることによってそれを全て解決しているのだから。
というのも僕みたいに疑った視点では、
この設定を作り上げることができないのよね。
「なぜ」を切り捨てたところでしか成立しない物語といったら童話でしょう。
その設定が功を奏しているのは確かだ。
例えばユーリのために少年トーマが自殺をするけど、
これが少女じゃ物語の前提が揺らぐ。
少女だったらエロスの問題が提出され、
そういうシーンを書かなくてはならなくなり、
キリスト教の土壌がない日本人の読者には少年と少女の愛が想起され、
神のもとでの愛が成り立たなくなる。
だから青春期の同性愛を必要とし、
更に違和感を薄れさせるために日本ではなく欧州を舞台に選ぶわけだ。
そこらへん分かっているところは著者周到で賢いね。
普通に読んだら美しき愛の物語だー!って感動するのだろう。
僕は全然感動できないや。
このマンガがダメだとはちっとも思わないし、
寧ろよく出来ていると思うけど、僕には合わないや。
やっぱエンターテイメントとしてはキレイに纏まっているけど、
大人が読むには値しないと思う。
冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。進行の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク…。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩寵。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作
女友達にオススメを貸してもらった。
「(このマンガは)文学してるんですよ!」
まぁ、威勢の良いことと思いつつも借りる。
別に文学が素晴らしいなんて思わないけど、
一般的にはマンガより優れたものってイメージなのかもしれない。
というよりマンガが浮上するためには比較対称が必要だから、
そのために敢えて高いところに据えておいて、それから引きずり落とす。
こういったイメージが必要なんだろうね。
少女マンガ読んだことないからどんなものか漠然としか分からないのだけど
これって多分少女マンガなんだろう。
絵のタッチだけじゃなくて世界が少女趣味だもの。
マンガの中は男ばっかりの世界なのに。
感想は文学じゃない。
あれもこれも「ブンガク」って告げれば「文学」になるご時世ですから
「文学」って言ってもいいけどね。
ヘッセ風味の中高生向けロマンスそっくり。
マンガとしては達成度が高いとは思うけど。
ギムナジウムも筋も拙いヘッセなんだよね。
手法は童話と似ているかな。
まず「なぜ、どうして」が切り捨てられた設定だから。
どうして少年同士が愛し合うのか?
「ギムナジウムの中の話だから」だけじゃ説明がつかない。
愛、愛、愛、愛、愛、愛とうるさいが、愛ってなによ?
キリスト教風味を世界観に持ち込んだはいいけど輪郭がはっきりしないのよね。
解説もエロスだとか言葉を持ち出しておきながら愛という問題に意識的ではないし。
でも著者はしたたかだ。
切り捨てることによってそれを全て解決しているのだから。
というのも僕みたいに疑った視点では、
この設定を作り上げることができないのよね。
「なぜ」を切り捨てたところでしか成立しない物語といったら童話でしょう。
その設定が功を奏しているのは確かだ。
例えばユーリのために少年トーマが自殺をするけど、
これが少女じゃ物語の前提が揺らぐ。
少女だったらエロスの問題が提出され、
そういうシーンを書かなくてはならなくなり、
キリスト教の土壌がない日本人の読者には少年と少女の愛が想起され、
神のもとでの愛が成り立たなくなる。
だから青春期の同性愛を必要とし、
更に違和感を薄れさせるために日本ではなく欧州を舞台に選ぶわけだ。
そこらへん分かっているところは著者周到で賢いね。
普通に読んだら美しき愛の物語だー!って感動するのだろう。
僕は全然感動できないや。
このマンガがダメだとはちっとも思わないし、
寧ろよく出来ていると思うけど、僕には合わないや。
やっぱエンターテイメントとしてはキレイに纏まっているけど、
大人が読むには値しないと思う。
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