チキンどうですかぁ〜

〔秘密メモ〕H・Kさん

「チキンどうですかぁぁぁぁ〜」

えーい、うるさい、朝から叫ぶな！
我が下宿は大通りの交差点（2本とも大通り）近くにあって
部屋の中まで外部の嬌声や車両の排気音が入ってくる。
クリスマスイブともなると店頭販売のチキン売り子の声が
うるさくて仕方がない。
「っていうか、チキンいかがですかって言えーや、アホ」
独り言が多くて困る、いや困ったふりをする。
ベランダに出るとサンタの格好をした若いギャルと
おじさんの計2名が奮闘しているのが見えた。
「朝からチキン買う奴も珍しかろう」

「チキンどうですかぁぁぁぁ〜」
昼過ぎにもなると少し疲れを帯びた声に変わっている。
「おー、がんばっとるのぉ」

「チキンどうですかぁ〜」
喉が痛いのか声のボリュームが一定していないし
時々「チキン」「チキン」の連呼で省エネしている。
「かわいそうに。でも女の子が困ってるのを見せるのも店側の作戦だよな」

夕方出掛ける時に売れないチキンを買ってやった。
おじさんが堤真一に似ていてしかも無愛想だった。
堤真一似でサンタの格好が笑えた。
それにしても女の子サンタのスカート短いよ。
足が寒かろうに。

当たり前なんだけどこうやってバイト漬けのクリスマスイブもありだし
家族や恋人と過ごすイブもありだし
宗教色の強いイブもあり。
この世に生を受けるイブもあるし、永遠の眠りにつくイブもあるんだよね。
この世の生きとし生けるものにとって毎日が特別だし
自分こそが主人公。