彼女に今朝しつこくアピールされた。
これは今夜から会うことになるだろうと思った。
そんな彼女は今夜研究室の飲み会らしい。
19時開始だと聞いていたので
もう帰ってきてもおかしくないはずだ。
22時半の雨の中を彼女の下宿先へ向かった。
マンションはオートロックだからロビーにも入れない。
建物近くで突っ立っているのも不審者みたいなので
敷地内はやめておいて散歩をすることにした。
僕は以前別の女の子と大喧嘩して部屋を閉め出され
声をかけても無視をされ
どうしようもなく部屋の前で時間が経つのを待っていると
管理人に通報されそうになって逃げた思い出など
若き日のなんとかが中途半端に蓄積されつつ
未だ継続中なのでこういうことに敏感なのだ。
家を出る前に送った携帯メールの返事が来たのは日が変わる直前だった。
彼女は帰って来ないらしい。
適当に残念そうな内容のメールを作ってはいるものの
淡白な態度が見て取れる。
友達にごめんねとか言いながら1分くらいで作ったメールだろう。
濡れ鼠になってまで片道1時間近くもかけて訪ねたのに
目前の飲み会（2次会）の方が重要なのかよ、という思いはない。
勝手に約束もないのに留守を訪問した僕が悪い。
飲み会を放擲させるくらいに魅力的でない僕が悪い。
朝あれだけアピールしたじゃないかとか
わざわざ訪ねているんだから1次会だけで帰ってきてもいいじゃないかとか
文句を言おうと思ったらいくらでも言える。
でも決して他人のせいにするもんか。
僕が会いたいから訪れただけだ。
断った彼女は悪くない。
平然としたメールを送る彼女に不平を抱いてはならない。
先週から僕はまた食欲が落ちてきた。
以前みたいに呼吸困難とかにならないだけマシだけど
食事をすると吐き気、冷や汗、息苦しさ、手足の震えの症状が出る。
他人と食事をするにはお腹が減って仕方がない状況を作らなくてはいけない。
人と食事するのが分かっていたらその日は夜まで何も食べないとか
10時間くらい食事の間隔を空けるとか。
今日は15時間も空けておいたのに一人の食事だった。
お椀を持つ手が震えた。
女の子に自分の心遣いが受け入れられなかった場合
「もう浮気してやる」
「お前じゃなくても相手してくれる女はいる」
という反発心で彼女が困るであろうことを考え出し
お互いが意地になってケンカをし始めるというパターンが多かった。
彼女は悪くない、ということにしておく。
でも腹が立つのでメールに返信はせず
明日は彼女に会わないことを前提に自分の計画を立てよう。
きっと彼女は誘ってくるだろうけれど
そう簡単に首を縦に振るものか、と思おうとする
しかし雨の中時間を潰すのに苦労して
それでも待っていたことも秘密にしておこう。
雨のせいで風邪をひいたかもしれないことも。
こんな少女じみた日記を書いていることも。
相手の都合で待たされるの久しぶりだから忘れかけていた気持ち。
捨て犬みたいだ、蒲団に包まっている。
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