真夜中の住宅街、明かりを求めて歩く。
肌寒い季節、ジャケットのポケットに手を突っ込んでずんずん歩く。
一戸建てを取り巻く、ブロック塀の上に、白黒のぶちネコ。
こいつは決まったときに決まった場所にしか現れない。
真夜中の友。 
 
真夜中の友と少し遊んでから機嫌よく再び歩み出す。
植え込みが切れたところで、20歳前後の娘が身をかがめている。
オートロックのマンションの入り口にちょこんと坐っている。
僕の足音で顔を上げる。
目が合う。
彼女が待っているのは僕じゃない。
彼女の顔はすぐに下を向いた。

すごく声をかけてみたい。
「どうしたんですか?なにかあったんですか?寒い中、こんなところに坐っていちゃ風邪をひく、部屋に入りなさい。行き場所がないならばわたしの部屋に来なさい」
ってね。

30分後に家路へつき、
遠回りをしてまたあのマンションの前を通ったら彼女はいなかった。
暖かな部屋に入り、彼に抱きしめられているのだろうか、と思う。

僕にはもうこれから、
女の子の帰りをマンションのエントランスで迎えることはないだろう。
逆に大好きな女の子に迎えられることもないだろう。
そんなことを思ったら、なんかむなしくなった。
むなしくなったよ。

*    *    *    *    *    *

ひと様のものは良く見える。
なんであんなに羨ましいんだろ。

去っていったものは懐かしく、
手に入らないものは目がくらむほどにまぶしく…。

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