シルエット

日が暮れるのも早くなり、
早くに―といっても定時なわけもないが、会社を出ると真っ暗になっている。
オフィスの明るさがまぶしくて、暗いところにいると解放感を感じる。

オフィスから駅までの道は寒い。
道路を行きかう車がおこす風で黄色いイチョウが舞う。
やせ我慢をする僕はスーツのときは
雪が降るくらいじゃないとコートを着ない。
寒い。

満員電車―ラッシュに巻き込まれるような早い時間に電車に乗れることは少ない―
で電車が傾くと人があっちに前の人と後ろの人のどちらかがくっついてくる。
変に自分の範囲を広げようと頑張る制服やスーツたち。
もうどっちでもいいじゃないか、と観念してしまえ。

電車から放たれて住宅街を歩くときにちらちらと見え始めたクリスマスの飾り。
電飾を明滅させて、ご近所さんとちょっと競ってみたり…。
くだらないと一笑にふすのもいいけど、あれはあれでいいな。
そんなことに時間や労力や金を費やせるという余裕。
それから家族がいるということ、とついつい思ってしまったけど、
家族がこの世に存在しつつも一人で暮らしているという僕の状況も
これはこれで素敵なことだと思えてくる。
世の中、くだらないことを楽しめた方がいいってことさ。

自分のしたいようにやるといい。

ただ開き直りはよくない。
それから醜いことと見苦しいことは違う。
自分のしたいことの範囲と世間に許容される範囲、
それから方向性と軸のずれは無意識でも行動に含まれるべきだ。

歩いた後にしか足跡はできない。
光のあたるところで存在しているものにしか影はない。

自分の進みたい道を行くがいい。

電車でアフターファイブのOLが
課長が書類を4時に持ってきてチョーむかつく、
3時半までって言ってるのにわかんねーのかよ、と。

立派に歩んでいるよね。

世の中、上を見てもきりがないし、下を見てもきりがない。
そんなくだらないことを思ってしまうくらいに俗な存在になってきているよ。